News
経営ノウハウ / 補助金 / 助成金
令和8年度税制改正の投資減税とは?中小企業が使える特別償却と経営力向上計画をわかりやすく解説

令和8年度の税制改正が公表され、中小企業の設備投資を後押しする「投資減税」の枠組みが大きく動きます。手元にお金を残す手段というと補助金を思い浮かべる方が多いのですが、もう一つの有力な選択肢が税制優遇です。

ただし、その多くは「計画の認定」という前提を満たしてはじめて使えます。この前提が意外と知られておらず、本来使えるはずの企業が使えていないのが実情です。本記事では、令和8年度税制改正の投資減税のポイントと、その前提になる計画認定の仕組みを、実務目線で整理します。

投資減税とは?補助金との違い

投資減税とは、建物や機械設備といった投資に対して、法人税などの負担を軽くする制度の総称です。代表的な効き方は次の2つです。

  • 特別償却:取得した設備の減価償却を前倒しし、初年度に大きく費用計上できる仕組み。制度によっては取得価額の全額を初年度に費用化できる「即時償却」も選べます。
  • 税額控除:取得価額の一定割合を、法人税額そのものから直接差し引ける仕組み。

補助金との違いを一言でいえば、補助金は「審査を通れば現金が入ってくる」制度、投資減税は「要件を満たせば税負担が下がる」制度です。補助金には採択という審査の壁がありますが、投資減税は所定の要件と手続きを満たせば効果が確定する点が特徴です。

補助金と税制優遇は性質が異なるため、どちらか一方ではなく、両方を視野に入れて検討する価値があります。

中小企業が使える主な投資減税の種類

令和8年度税制改正に関連して、中小企業が押さえておきたい制度は主に次の2つです。多くの中小企業にとって身近なのは前者です。

多くの中小企業に身近な「中小企業経営強化税制」

資本金1億円以下などの中小企業が、対象となる設備を導入したときに使える制度です。後述する「経営力向上計画」の認定を受けることが前提になります。効果は次のいずれかを選べます。

  • 特別償却(機械装置等は実質的に即時償却。建物は償却率が異なります)
  • 税額控除:機械装置等は資本金3,000万円以下の法人が取得価額の10%、3,000万円超1億円以下の法人が7%(建物・附属設備は割合が低くなります)

対象になる設備には、最低取得価額の目安があります。おおむね、機械装置は1台160万円以上、工具・器具備品は30万円以上、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上、建物は1,000万円以上とされています。

適用期限については注意が必要です。現行制度は令和9年3月末までとされており、令和8年度改正で延長される見込みですが、最終的な期限や要件は国税庁・中小企業庁の最新情報でご確認ください。

大規模投資向けの新制度「特定生産性向上設備等投資促進税制」

令和8年度改正で新設される制度で、一部で「ハイパー償却」とも呼ばれています。経済産業大臣の確認を受けた投資計画(投資利益率15%以上)に基づく設備投資について、即時償却か、税額控除7%(建物等は4%)を選択できる仕組みです(財務省 令和8年度税制改正大綱)。

ただし、投資の下限が中小企業でも5億円以上と大きく、大規模・戦略的な投資を行う一部の企業向けの制度です。多くの中小企業にとってまず検討したいのは、前述の中小企業経営強化税制のほうだといえます。

前提になる「経営力向上計画」「先端設備等導入計画」とは

投資減税の多くは、その手前で「計画の認定」を受けることが条件です。ここが知られていないポイントです。

経営力向上計画

中小企業等経営強化法に基づき、生産性を高める取り組みをまとめた計画を国が認定する仕組みです。認定を受けると税制・金融・法的な支援が受けられ、中小企業経営強化税制の前提にもなります。

中小企業庁によると、認定件数は令和8年1月末時点で累計約19万5,512件です。一方で、中小企業は全国に約336万者(2021年6月時点・中小企業庁)あります。この対比からも、まだ活用の余地が大きい制度だとわかります。

先端設備等導入計画(固定資産税の特例)

市区町村の認定を受けると、新規に取得した設備の固定資産税の課税標準が軽減されます。ここで重要なのは、賃上げの表明水準によって軽減率と期間が変わるという点です。

  • 給与総額の増加を1.5%以上表明する場合:課税標準を2分の1に軽減(3年間)
  • 給与総額の増加を3.0%以上表明する場合:課税標準を4分の1に軽減(5年間)

「一律で5年・4分の3軽減」というわけではなく、賃上げの水準に応じて内容が変わります。また、この特例は経営力向上計画とは別に、「先端設備等導入計画」の認定が必要です。制度ごとに手続きが分かれている点に注意してください。

効果が大きいのに、なぜ使われていないのか

これだけ効果のある制度ですが、実際に活用している企業は多くありません。最大の理由は、制度そのものと、前提になる計画認定の存在が十分に知られていないことです。

現場では「そうした制度は聞いたことがない」という声も珍しくありません。前述のとおり、経営力向上計画の累計認定は約20万件で、全国の中小企業数と比べるとまだ限られており、普及の途上にあることがうかがえます。

投資減税は、要件さえ満たせば効く”確定効果”です。だからこそ、知っているか、そして事前に準備したかで結果が変わります。特に計画の認定は、原則として設備を取得する前に受ける必要があります。買ってから気づいても間に合わない、という点がこの制度の難しさです。

投資減税を活かすための実務ポイント

投資減税を実際に効かせるために、押さえておきたいポイントを整理します。

  • 認定は設備取得の前に:経営力向上計画も先端設備等導入計画も、原則として設備を取得する前に認定を受ける必要があります。投資の計画段階で早めに動くことが大切です。
  • 賃上げ表明の水準を検討する:固定資産税の特例は、賃上げの表明水準で軽減率と期間が変わります。人件費の方針とあわせて設計すると効果を高められます。
  • 補助金との併用は個別に試算する:補助金と税制優遇は併用できる場合もありますが、補助金で圧縮記帳を使うと帳簿上の取得価額が下がり、税額控除の最低取得価額要件を下回って控除が使えなくなることがあります。組み合わせは事前に税理士と試算するのが安全です。
  • 事業承継・M&Aは別枠の軽減もある:事業承継やM&A(合併・会社分割・事業譲渡など)に伴う不動産の取得については、登録免許税・不動産取得税の軽減措置があります(詳細な要件は個別にご確認ください)。
  • 適用期限と最新要件を確認する:税制は改正で内容が変わります。適用期限や対象要件は、国税庁・中小企業庁の最新情報で必ず確認しましょう。

まとめ:判断に迷ったら専門家に相談を

令和8年度税制改正では、中小企業の設備投資を後押しする投資減税が拡充・新設されます。補助金と並ぶ、手元資金を残すための有力な手段です。

一方で、その多くは計画認定という前提を満たしてはじめて使え、しかも認定は設備取得の前に済ませておく必要があります。効果が大きいのに使われていないのは、制度が知られていないことと、事前準備が欠かせないことが理由です。

私たちシャイン総研は、補助金・公的支援の活用を長年にわたり支援してきました。補助金と税制優遇を横断して、自社にとって最適な組み合わせをご提案できます。設備投資をご検討中で、投資減税を「使える経営」に落とし込みたい方は、投資の計画段階でお気軽にご相談ください。